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  確定的影響 閾値あり     ICRP2007勧告i
 

 

 閾値は組織維持に必要な細胞集団に放射線損傷(大きな機能不全または細胞死)を認め得る最小線量である。5年以内に1~5%の患者に障害が生じた線量で表す。閾値以上では線量増大の増加にともなって障害が重篤となり、発症頻度のグラフはS字をえがく。
 100mGy以下の短期被曝の繰り返しや毎年繰り返し被曝では症例がない。また、数月から数年の長期被曝ではその間に細胞が回復するために閾値が大きくなる。

 以下は国際放射線防護委員会(ICRP)の1990年勧告、2007年勧告による。

 

 (1) 生殖腺(gonad)→不妊

 1回短時間被曝で発症1%の閾線量は男性の一時的不妊(3~9週間で発症)0.1Gy、女性の永久不妊(1週間未満で発症)3Gy、男性の永久不妊(3週間で発症)6Gyである

出典:ICRP2007年勧告付属書B。

 (2) 眼の水晶体(lens)→水晶体混濁と視力障害(白内障)

 1回短時間被曝で発症1%の閾線量は視力障害(白内障)1.5Gy(数年で発症)である(ICRP2007年勧告付属書A)。ただし、中性子など高LET放射線では効果が大きく、閾線量は1/2から1/3となる。

出典:ICRP2007年勧告付属書A

 (3) 骨髄(bone marrow)→造血機能の低下と死亡

 1回短時間被曝で発症1%の閾線量は造血機能低下0.5Gy(3−7日で発症)、骨髄障害は「治療なしで1Gy」(30−60日で死亡)、「良い治療で2−3Gy」(30−60日で死亡)である。

 1回被曝で発症50%の半致死線量LD50/60は「被曝後の治療なしで3−5Gy」(30−60日で発症)「被曝後に適切な治療で9Gy」である。

出典:ICRP2007年勧告付属書A

 (4) 甲状腺(thyroid)→甲状腺機能低下症、急性甲状腺炎、慢性リンパ性甲状腺炎(橋本病)

 甲状腺は他の内分泌臓器(脳下垂体、副腎など)に比べて、放射線感受性が高い。

① 甲状腺機能低下は、高線量で被ばく後1年以内に発症する。

 閾線量は成人25〜30Gy、小児1Gyである。外部被曝1Gy以下、内部被曝10Gy以下の発症事例はない。

② 急性放射線甲状腺炎は甲状腺組織が炎症または壊死する。I−131の内部被曝の場合、閾線量は200Gyであり、被曝開始2週間後の発症例がある。

③ 慢性リンパ性甲状腺炎は、著しい侵潤リンパ球を伴う甲状腺腫を主兆とした自己免疫疾患である。小児期の放射線照射で慢性リンパ性甲状腺炎に発症例がある。10Gy以上の被曝をした場合、数年後に発現する可能性がある。

出典:ICRP Publ.41(1941)

 (5) 皮膚(skin)→紅斑、脱毛、乾性落屑、湿性落屑、壊死

 1回短期被曝で発症1%の閾線量は、紅斑と乾性落屑は3−5Gy(3週間で発症)、湿性落屑は20Gy(4週間で水疱発症)、壊死は50Gy(3週間で発症)である(以上=ICRP1990年勧告)、大面積の皮膚紅斑3~6Gy(1~4週間で発症)、大面積の火傷は5~10Gy(2~3週間で発症)、一時的脱毛は4Gy(2~3週間で発症)である(以上=2007年勧告付属書A)。

 (6) 胃腸管障害(gastro-intestinal syndrome)と間質性肺炎(pneuminitis)
 1回短期被曝で発症1%の閾線量は、胃腸管死5Gy(1~2週間で発症)、肺炎死10Gy(急性)、神経系障害死15Gy(1~5日で発症)(以上=
ICRP1990年勧告)、小腸の胃腸管障害死は「治療なしで6Gy」(6~9日で発症)、「良い治療で6Gy」(6~9日で発症)、間質性肺炎死6Gy(1~7か月で発症)である(以上=2007年勧告付属書A)

 (7) 胚と胎児(embryo and fetus)→胚の致死、奇形や成長・形態変化と精神遅滞

 1回短期被曝で発症1%の閾線量は、実験動物の胚の致死、奇形や成長・形態変化100mGyであり、ヒトの重度の精神遅滞は原爆調査を根拠に300mGyとされる。

出典:ICRP2007年勧告付属書A。

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